広島の路面電車などにスマホで乗車「MOBIRYデジタルチケット」を利用してみた

「MOBIRYデジタルチケットサービス」とは

近年の交通業界で急速にトレンドとなっている「MaaS(マース:Mobility as a Service)」とは、マイカー以外の全ての交通手段を1つのサービスとして捉え、ICT(情報通信技術)を活用してシームレスにつなぐ新たな「移動」の概念です。利用者がスマートフォンのアプリなどを使って、鉄道やバスの公共交通やカーシェア・レンタルサイクルといった移動手段も含めて運営主体に関わらず一括で検索・予約を行えるサービスを提供することで情報の格差を解消し、マイカーの減少による環境改善を促進する効果も期待されます。


広島市内で日本最大級の路面電車網を運営する広島電鉄は、広島エリアにおける「MaaS」の取り組みの第一段階として、スマートフォンで乗車券などを購入・使用できる「MOBIRYデジタルチケットサービス」を2020年3月10日から開始しました。「MOBIRY」には利用客のニーズに応じた様々な種類のチケットが用意されており、広島中心部や宮島への観光に便利な広電電車や各事業者のバス・フェリーだけでなく、近隣の呉エリアや山口県の岩国エリアでも利用できるものもあります。

発売されているチケットの種類や価格などの詳細情報は「MOBIRY」の公式サイトをご覧ください。


「MOBIRYデジタルチケット」の利用方法

「MOBIRY」に登録してチケットを購入する

「MOBIRY」の大きな特徴の一つが、スマートフォンアプリのダウンロードは不要であることです。そのためスマートフォンのWebブラウザとクレジットカードがあればすぐに利用することができます。筆者は出来るだけアプリの数を増やしたくない派なのでこれはとても嬉しいですね。

まずはトップページから「チケットを購入・使用する」を選択してログインもしくは新規登録(GoogleまたはFacebookのアカウントでもログイン可能)を行います。そしてメニュー画面の「チケットの購入」からチケットの種類・枚数を選択(広島たびパスなどの一部チケットではオプション券も購入可能)し、最後に領収書のメールが届けば購入完了です。

詳しくは以下の公式動画をご覧ください。

チケットの使用開始期限は購入後90日間なので、現地に到着する前に予め購入しておくことができます。


デジタルチケットを使用する

チケットを使用開始する際には、メニュー画面の「購入済みチケットの確認・使用」を選択し、「使用前」の中から使うチケットを選び、最後の確認画面で「使用開始する」を押した時点から有効期間が開始されます。

こちらも詳しくは以下の公式動画をご覧ください。

「使用開始する」を押すのはチケット画面を乗務員に掲示する直前です。ただし、片道券および往復券の場合は掲示するタイミングが利用する交通機関によって異なる場合があるので注意が必要です(使用開始を押してから5分間までが有効)。


広電電車の8時間フリー乗車券で利用してみた

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって「MOBIRY」を実際に利用する機会が無い状況が続いていましたが、先日ようやく利用することができました。様々な乗り物で試してみたいところですが、今回は時間の都合で広島電鉄の電車のみに乗車します。

広電電車のみのフリー乗車券には8時間600円タイプ24時間700円タイプの2種類があります。今回は長時間使用しないので「広電電車 乗車券(8時間)」を購入しましたが、時間が足りるかどうかギリギリになってしまうような可能性が少しでもあるのならプラス100円で24時間タイプを選んだ方が良いでしょう。

実際に使用した感想などはツイートにまとめました。

「MOBIRY」を利用するメリット

まとめツイートにも書いたとおり、現時点では既存チケットをほぼそのままデジタル化したという段階ではありますが、それでも「MOBIRY」を利用するメリットは十分にあると感じました。

まず重要な料金面ですが、既存の路面電車のみの一日乗車券は700円、宮島松代汽船にも乗船できる一日乗車乗船券は900円だったのに対し、「MOBIRY」では同額のまま24時間使用出来るようになったため、使い方によってはお得になります。同じく「広島たびパス」も従来は1day・2day・3dayだったものが24時間・48時間・72時間となり、さらに周辺エリアへのバス乗車券などを割引で購入出来るオプションもあるのは大きいです。単品の片道・往復乗車券は通常と同額ですが、フリーチケット購入のついでに別のエリアへも気軽に行動範囲を広げられる点はまさに「MaaS」の魅力です。

そしてなによりも一番便利なのがいつでもどこでも購入できることです。路面電車の一日乗車券は各所の定期券売り場や電車の乗務員などから購入する必要があり、売り切れや営業時間の都合で購入できない可能性もありますが、「MOBIRY」なら時間があるときに自宅からでもチケットを手に入れることが出来ます。ちなみに今回筆者は始発前の午前5時頃に購入しました。


今後改善を期待する点

ツイートの最後に書いた "信用乗車方式に対応したシステム" というのはかなりハードルの高い理想かもしれませんが、細かい部分での改善を期待することを二つ挙げます。

一つはサービスの周知です。広島電鉄公式サイトからお得な乗車券について調べようとした時に、まだ「MOBIRY」の存在が分かりにくいように感じます。また、今のところ電車内にも「MOBIRY」関連の掲示は見当たりませんでした。まだ取り組みの第一段階だからかもしれませんが、是非もっと利用者に存在をアピールできるようになってほしいと思います。

もう一つは宮島ロープウエーに関する取扱いです。従来の一日乗車乗船券には、宮島ロープウエーの切符売り場で券を呈示すると割引運賃で利用できる特典があります。一方「MOBIRY」では一日乗車乗船券に加えて「広島たびパス」でもこの特典が得られるようになりましたが、その方法が "オプション券を「0円で」購入して呈示し、割引運賃を「現金」で支払う" というものです。クレジット決済に対応できなかったことはやむを得ないとしても、オプション券の購入という従来より手間が増えてしまった点については改善の余地がありそうです。



「MOBIRY」を開発した広島電鉄とNECは、今後のさらなる機能拡充に向けて経路検索や事業者間清算システムの実装、シェアサイクルなど様々な機能との連携を図っていくとしており、また当初の発表では "利用回数に制限のあるフェリー・ロー プウェー等は施設に貼付されているQRコードをスマートフォンのカメラで読み取ることで利用が可能" という記載があったため、前述の宮島ロープウエーに関する取扱いについても将来的には機能のレベルアップによって改善されるかもしれません。

新型コロナウイルス感染症の影響もあってかなりひっそりとスタートした「MOBIRY」ですが、広島近辺に在住の方や今後広島に観光で訪れたいと考えている方は、スマホ一つで楽々移動できるこのサービスを試してみてはいかがでしょうか。



参考資料


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