JR総武快速線新小岩駅のホームドアと無線連携システム

取材日 2019年11月29・30日

※今年4月に投稿した記事を再取材の上で加筆・修正した改訂版です。


1 ホームドアの概要

2011年7月以降、他の駅より突出して人身事故が急増するようになったJR総武線新小岩駅。利用客や沿線自治体の葛飾区・市川市からも早期のホームドア設置が求められた結果、JR東日本の在来線では山手線・京浜東北線以外で初(試行導入駅を除く)のホームドア設置が決定し、2018年12月8日に総武快速線の3・4番線で稼働開始されました。

主要諸元は以下の通りです。

※正確な数値が判明していない寸法は目測での推定値を記載

ホームドアのタイプは山手線・京浜東北線と同じく腰高式ですが、TASC(定位置停止装置)等の運転支援装置は未整備のため、開口幅は2,800mmと広めに取ることで許容範囲±750mmを確保しています。

山手線・京浜東北線はTASCが導入されており開口幅は2,000mmで許容範囲は±350mm。


特徴的なのが先頭車両のドアピッチが狭まっている部分に対応する二重引き戸です。この扉を収める筐体は幅が800mmほどしかない一方で厚さは400mmほどもあります。

ホームドアの製造メーカーはJR東日本メカトロニクスとされていますが、実際は三菱重工交通機器エンジニアリングによるOEM(受託製造)だった模様です。そのため、同じような二重引き戸がある同社製りんかい線国際展示場駅のホームドアと構造は酷似しています。

しかし、他駅に設置された同メーカー製ホームドアの特徴である筐体ホーム側を1枚のパネルで構成する造りとは異なっています。また、7号車1-2番ドア間の筐体には駅係員操作盤が内蔵されているため、通常よりも厚さが増しています。


そして同駅はグリーン車が連結されている路線で初めてのホームドアですが、当該部分の開口は普通車部分と同じく両開きの2,800mmで、ドア間も特別な処理は施されず白い壁が並ぶ形となりました。


2 無線式ホームドア連携システムによる開閉連携

同駅のホームドアは、無線通信を用いて車両ドアとホームドアを連携する無線式ホームドア連携システムが使用されています。連携方式として長年主流だったトランスポンダ連携方式よりも、車両側の改修も含めて低コスト・短期間で設置を行うことができるといいます。

このシステムについては、開発した日本信号のWebサイトや公開されている特許情報で詳しく知ることができます。(リンクは参考資料の項に記載)


特徴的なのは、使用する無線の電波にLF帯(長波)UHF帯(極超短波)の二種類を使用している点です。これによって確実で信頼性のある開閉連携が実現されています。

列車進入時における無線連携式の基本動作は以下の通りです。

  1. 停止位置検知装置で列車の定位置停止を検知(新小岩駅では車両前面を測定)
  2. 非常に狭い範囲のみに伝搬するLF帯無線を用いて地上から車上へ入線したホームごとに異なる駅情報を送信
  3. 車上側のUHF送受信部はLF帯無線によって受信した駅情報からUHFチャンネルを指定のものに切り替える
  4. ドア開閉情報などの情報を送受信し車両ドアとホームドアを連携して開閉する


地上側の主要機器

中央の灰色の箱が地上側の無線アンテナ、右側の2基縦並びで設置された3D距離画像センサが定位置停止検知センサです。


停止位置検知センサはホームの千葉方端部に1箇所、地上側アンテナは11両編成・15両編成それぞれの前後部に設置されています。

なお、同駅に発着する列車は全てE217系での運転で、基本編成単独の11両編成と基本編成+付属編成の15両編成の二種類がありますが、地上側がどのアンテナで車上側と通信しているかを認識することで編成両数の判別が行われています。

また、新小岩駅を含む区間を付属編成単独で運行することは無いため、常時中間運転台となる増4号車の運転台に後述する車上側の機器は搭載されていません。


車上側の主要機器

(1)LF受信部

同駅のホームドア設置を前に、横須賀・総武快速線のE217系全編成に無線連携システムの機器が新設されました。

列車が定位置範囲内に停車すると、非常に狭い範囲のみに伝搬するLF帯無線を用いて入線したホームごとに異なる駅情報が地上側から送信され、車上側は乗務員室左右の側窓に設置された「ホームドアLF受信部」でその情報を受信します。


(2)UHF送受信部

ドア開閉情報などホームドア連携を行うための基本的な情報を送受信する「ホームドアUHF送受信部」は、LF帯無線によって受信した駅情報からUHF帯無線を指定のチャンネルに切り替えることで、複数のホームに列車が在線している場合でも車両とホームドアの関係を確実に結びつけて開閉連携を行うことができます。


(3)FD表示器

運転席の上部にはホームドアの状態を表示する「FD表示器」が設置されています。

新小岩駅接近・停車時の推移は以下のようになっていました。

連携方式こそ異なりますが、表示内容は山手線等と大きくは変わっていないようです。

これらのうち「定位置」表示灯は左右乗務員扉の内側上部にも設置されており、新小岩駅では車掌がこの表示灯の点灯を確認してドア開操作を行います。

下り列車の場合、「ホームドア分離」から「ホームドア連携」へは駅手前の荒川橋梁を渡り終えた付近で自動的に切り替わっていました。この切り替えを行うための位置情報をどこから取得しているのかは今のところ分かっていません。

列車が新小岩駅に接近すると、地上側UHFアンテナから送信されている連携駅であることを知らせる信号を受信することで分離モードから連携モードへ自動で切り替わります。新小岩駅を出発後は一定時間信号を受信しなくなると連携モードから分離モードへ切り替わります。


(4)無線連携電源部

(5)ホームドア分離出発スイッチ

助士側に設置された「無線連携電源部」「ホームドア分離出発スイッチ」

「ホームドア分離出発スイッチ」は、故障等で地上側から「ホームドア全閉」情報が送信されず発車できない場合などに使用するスイッチです。


このほかにも、地上側から「ホームドア全開」情報が送信されない場合に車両ドアのみ開扉できる「ホームドア分離開扉スイッチ」や、強制的に連携モードと分離モードを切り替える「ホームドア連携スイッチ」などが乗務員室内の各所に設置されています。



この無線式ホームドア連携システムは、埼京線E233系7000番台や相模鉄道の新型車両12000系にも搭載が確認されており、今年11月開業予定の相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅のホームドアで使用されるのではないかと推測しています。2019年11月30日に開業した相鉄・JR直通線羽沢横浜国大駅のホームドアで使用されています。しかし同駅で無線連携式が使用されるのはJR側の発着時のみで、相鉄側の発着時には地上完結型の連動システムが使用されるという特徴があります。


また、JR東日本は2032年までに首都圏全駅のホームドア設置を発表しており、低コストで設置可能なこの無線連携式が今後の基本仕様になっていくのかもしれません。

また、『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』Vol.56の「総武快速線新小岩駅ホームドア連携システム導入に向けた開発と今後の展開」によると、JR東日本は首都圏在来線で今後整備されるホームドアには低コストな無線連携式を標準として採用していく方針を示しています。今年度末の供用開始を予定している成田空港駅・空港第2ビル駅の昇降式ホーム柵にも使用される模様で、同駅に乗り入れる幕張車両センター209系の一部編成や成田エクスプレスE259系への改造工事が進んでいます。

しかし、これら今後の採用駅では、新小岩駅・羽沢横浜国大駅と異なりLF帯無線がを使用しない新しい方式となることが同資料によって明らかとなりました。詳しくは成田空港駅の昇降式ホーム柵稼働開始に併せて紹介できればと思っています。



参考資料

総武快速線 新小岩駅のホームドア使用開始時期について - JR東日本千葉支社

三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社

可動式ホームドア|日本信号株式会社 AFC事業部

特許 第5517706号 ホームドア制御システム - astamuse

根本 卓、千葉 正志、布施 毅、横山 啓之、笠井 貴之、山上 正規「総武快速線新小岩駅ホームドア連携システム導入に向けた開発と今後の展開」『鉄道サイバネ・シンポジウム論文集』Vol.56、日本鉄道サイバネティクス協議会、2019年

井出 典宏、阿部 康弘「新小岩駅総武快速線へのホームドア設置工事について」『R&M : Rolling stock & machinery』2019.4、日本鉄道車両機械技術協会、p39-42

石川 雅一、廣瀬 寛、加藤 幸夫「山手線E231系500番台 ホームドア導入に伴う車両改造概要」『R&M : Rolling stock & machinery』2010.9、日本鉄道車両機械技術協会、p11-13


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