京成電鉄のホームドア 地上完結型連携システムによる開閉制御

取材日 2019年3月21日・11月29・30日


京成電鉄では、2017年度に日暮里駅下りホームに、2018年度に日暮里駅上りホームと空港第2ビル駅にホームドアが設置されました。当記事では、京成電鉄のホームドア開閉制御に用いられている「地上完結型連携システム」について簡潔にまとめています。

京成電鉄の代表的列車といえば在来線最速の時速160km運転で上野・日暮里と成田空港を結ぶAE形スカイライナーですが、そのAE形は1両あたりの車体長が19mで片側1ドアであるのに対し、一般車両は車体長18mで片側3ドアと車両規格が大きく異なっています。

それらが混在して運行されている京成線においても2017年度よりホームドアの設置が開始されます。しかし、AE形と一般車でドア位置が大きく異なるため、その両車が共に発着するホームでは一般的なホームドアで対応することができません。そのため昇降式など新タイプのホームドアの導入も検討されたそうですが、最終的には三菱重工交通機器エンジニアリング製の二重引き戸式大開口ホームドアが採用されました。各駅のホームドア本体については別記事で紹介しています。


ホームドアは車種や編成両数に応じて開閉する箇所を制御する必要がありますが、車両側にホームドアと車両ドアを連携して開閉するための機器を搭載するには膨大な費用・時間が必要となります。同時期には相互直通運転を行ってる東京都交通局がQRコードを用いた低コストなホームドア開閉制御の開発を行っていました。

しかし京成ではこのQRコード式ではなく、ホームドアと同じメーカーによって開発された、車両側の改修を必要としない「地上完結型連携システム」が採用されました。


地上完結型連携システムの概要

このシステムは三菱重工交通機器エンジニアリングとJR東日本メカトロニクスが共同開発したもので、当初は「地上完結型簡易連携システム」と称されていました。センサ等の地上側設備のみで車種・編成両数の判別や車両ドアの開閉を検知するため、車両側の改修を必要とせずに車両ドアとホームドアの開閉連動を行えることが大きなメリットです。このシステムは2016~17年に京急電鉄三浦海岸駅で行われたマルチドア対応型ホームドア「どこでもドア®」実証実験において同時に試験されていたもので、そこからトンネルを通じて繋がる京成が実用化第一号となりました。

なお、2018年2月に京成初のホームドアが日暮里駅1・2番線で稼働開始した当初、このシステムによって行われていたのは車種・編成両数の判別のみで、開閉自体は車掌の手動操作で行われていました。その後システムの信頼性が確認されたためか2018年度に開扉が自動化、さらに2019年度には車両ドア開閉検知用センサの増設により閉扉も連動化されました。


論文などによると、このシステムを構成する3種類のセンサには停止位置検知用センサ・在線検知用センサ・車両ドア開閉検知用センサという名称が付けられています。これらの各種センサで列車検知がどのようにして行われているのかを、日暮里駅0番線を例に解説していきます。


①停止位置検知用センサによる車種判別・定位置停止の検知

測域センサ(2D-LiDAR)で車両の連結部を測定することで列車が停止位置許容範囲内に停止したことを検知します。この方式は近年多くの鉄道会社で採用されていますが、京成ではそれに加えて、停止位置検知用センサの組み合わせによりAE形と一般車で車体長が異なることを活用した車種の判別も行わているのが最大の特徴です。

AE形と一般車が共に発着するホームでは、編成の中央にあたる4-5号車連結部を合わせるように両車の停止位置が設定されており(両車のドア位置のズレ量を最も少なくできる位置のため)、日暮里駅0番線の場合はその4-5号車連結部にセンサBが設置されています。一方の、両車で3mほど連結部の位置にズレが生じる1-2号車連結部には、AE形の連結部にセンサAが、一般車の連結部にセンサCがそれぞれ設置されています。

このように、両車で場所が同じ連結部にセンサBを、両車で場所が異なる連結部にそれぞれセンサAセンサCを設けることで、以下のように車種の判別が行われます。

  • センサA・センサBで連結部を検知=AE形と判定
  • センサC・センサBで連結部を検知=一般車と判定

車体長という物理的に変化することのない要素を活用することで、確実な判別が可能となっているのです。


※センサA・B・Cは便宜上の名称です。


②在線検知用センサによる編成両数の検知

8号車付近の在線検知用センサはホームとは反対側に独立した支柱に設置。

①の方法で列車の定位置停止を検知した際、ホームに複数箇所(日暮里駅0番線では4ヶ所)に設置された在線検知用センサがそれぞれの場所で車両を検知しているか否かで列車の編成両数を判別しています。


このように、定位置停止検知と在線検知の組み合わせにより車種・編成両数を判別し、それに対応した箇所のホームドアを自動で開扉する制御が行われています。


③車両ドア開閉検知センサ増設による閉扉連動化

増設された車両ドア開閉検知用センサ。車両ドアには都営浅草線・京急線でのホームドア制御に用いるQRコードが貼られていますが、京成のホームドア制御には一切関係ありません。

以前は車掌の手動操作だったホームドアの閉扉ですが、2019年夏頃より各ホーム3ヶ所に車両ドア開閉検知用センサが増設されます。これにより、車掌がドア閉操作を行い車両ドアが閉まり始めると、センサがそれを検知してホームドアも追従して自動閉扉するようになりました。


以上のような方法で、規格が大きく異なる車両が混在する路線でも、車両側の改修を必要とせずにホームドア開閉制御の全自動化が実現されました。


日暮里駅0番線の各種センサ配置図

日暮里駅0番線では各種センサが上図のように配置されていましたが、駅構造や各編成両数の停止位置設定との関係なのか、配置はホームごとに全く異なっています。


ホームドア状態表示灯・停止位置範囲表示灯

運転士用・車掌用それぞれにホームドアの状態を示す「開閉表示灯」と「停止位置範囲表示灯」が設置されています。列車が定位置に停車すると、停止位置範囲表示灯には各種センサで判定した車種・編成両数が「AE」「8」「6」「4」という形で表示されます。


回送列車等への対策

京成電鉄ではホームドアのシステムと列車選別装置等のシステムが連動しておらず、回送列車等が通常の停止位置に停車した場合でもホームドアが開いてしまうことになるため、機外停止位置という標識の場所に停車させることでホームドアの自動開扉を防いでいます。



以上が京成電鉄の地上完結型連携システムによるホームドア制御方式の概要です。停止位置検知用センサの組み合わせで車種を判別するという方法は非常に画期的なものですが、他の車種判別方法(QRコードやRFIDタグ)と比較して、コスト面や性能面でどの程度優劣があるのかは気になるところです。

また、2019年度中には成田空港駅の各ホームにもホームドアが設置される予定ですが、同駅ではアクセス線ホームと本線ホームの縦列停車という特殊な運用もあり、列車検知システムの複雑さはさらに増しそうです。



参考資料

新型ホームドア導入検討の手引き - 国土交通省

ホームドア | 三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社

諸岡 利憲「京成電鉄のホームドアについて」『鉄道と電気技術』Vol.30-No.7、日本鉄道電気技術協会、p19-23


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