京成電鉄 日暮里駅のホームドア

取材日 2019年11月29日


1 ホームドアの概要

京成電鉄日暮里駅では、2018年2月24日に同社初のホームドアが下りホームで稼働開始しました。下りホームはライナー列車と一般列車でホームが分かれているため、それぞれのホームに一般的なタイプの腰高式ホームドアが設置されます。

さらに直後の同年3月、当初は固定柵を整備する計画だった上りホームにも安全性向上のためホームドアを整備することが発表されます。上りホームはAE形と一般車が同じ0番線に発着するため、ドア位置の大きく異なる両車に対応が可能な最大幅5m超という巨大開口ホームドアが開発され、同年12月に稼働開始しました。


1.1 下りホーム1・2番線

京成の代表的列車AE形スカイライナーは1両あたりの車体長が19mで片側1ドアであるのに対し、一般車両は車体長18mで片側3ドアと車両規格が大きく異なっています。しかし日暮里駅上りホームは1番線がスカイライナー・イブニングライナー用、2番線が一般列車用とホームが分かれているため、1番線にはAE形に、2番線には一般車両のドア位置に対応したホームドアが設置されました。

自社および乗り入れ各社の車両にはTASC(定位置停止装置)が整備されていないため、1・2番線ともに停止位置許容範囲±750mmを確保できる開口幅となっています。


1番線(ライナー用)ホームドアの開口幅は推定2,400mmで、各号車ドア横には非常脱出用の扉が設けられています。AE形は1両1ドアのためドア同士の間隔が非常に長いですが、その間の柵に特別な処理は施されず白い壁が並ぶ形となりました。


2番線(一般列車用)ホームドアの開口幅は推定3,300mmで、各編成両数(4両・6両・8両)の最前後部には乗務員出入用の扉が設けられており、その前後の扉は戸袋スペースが狭くなるため二重引き戸式となっているのが特徴です。


ホームドアおよび後述する制御システムのメーカーは三菱重工交通機器エンジニアリングで、1番線には同社の広告が設置されています。


1.2 上りホーム0番線

冒頭でも述べたように、2016年当初の計画では日暮里駅のホームドア整備は下りホームのみで、上りホームには固定柵が整備される予定でした。これは同駅が終点京成上野駅の1つ手前の駅であり、同駅から上り列車を利用する乗客は少ないためだと思われます。

しかしその一方、同駅で上り列車から下車する乗客は非常に多く、エスカレーター・エレベーターの容量が不足気味なこともあり、大きな荷物を持った空港利用客がホームに滞留する光景も多く見られていました。こうした理由もあってか上りホーム0番線にもホームドアを整備する方針へと変更され、2018年12月23日に稼働が開始されました。


AE形と一般車ではドア位置が大きく異なるため、その両車が共に発着する0番線では一般的なホームドアで対応することができません。そのため昇降式など新タイプのホームドアの導入も検討されたそうですが、最終的には下りホームと同じ三菱重工交通機器エンジニアリング製の二重引き戸式大開口ホームドアを最大限活用し、最大で幅5m超という巨大開口で両車への対応を可能としました。これは2019年末現在、昇降式等を除けば在来線のホームドアで最大のサイズです。


その他の開口部もAE形と一般車のドア位置のズレに合わせ、二重引き戸を組み合わせて様々な開口幅が作り出されています。ただし、停止位置許容範囲は僅かに狭まって±650mmとなりました。


AE形と一般車のドア位置とホームドアがどのような位置関係にあるかを表したイメージ図です。ここまでの巨大開口が実現できたのは、一般車が18m3扉車でドアピッチが比較的広いために、それを収納できる筐体の長さを確保できたからでもあります。首都圏の主流であるドアピッチの狭い20m4扉車では不可能だったでしょう。


2 ホームドアの開閉方式

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉(上昇):自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉(下降):自動(ドア開閉検知)

京成電鉄のホームドアは、直通先の都営浅草線・京急線で採用されたQRコード式ではなく、センサ等の地上側設備のみで車種・編成両数の判別や車両ドアの開閉を検知する「地上完結型連携システム」によって制御されています。詳しくは別記事で紹介していますのでご参照下さい。

なお、同駅1・2番線で稼働開始した当初、このシステムによって行われていたのは車種・編成両数の判別のみで、開閉自体は車掌の手動操作で行われていました。その後システムの信頼性が確認されたためか2018年度に開扉が自動化、さらに2019年度には車両ドア開閉検知用センサの増設により閉扉も連動化されました。


停止位置検知用センサ(左)と2019年度に増設された車両ドア開閉検知用センサ(右)。


0番線8号車付近の在線検知用センサはホームとは反対側に独立した支柱に設置。

このシステムを構成する3種類のセンサには停止位置検知用センサ・在線検知用センサ・車両ドア開閉検知用センサという名称が付けられています。それぞれの役割は以下の通りです。


①停止位置検知用センサによる車種判別・定位置停止の検知

測域センサ(2D-LiDAR)で車両の連結部を測定することで列車が停止位置許容範囲内に停止したことを検知します。この方式は近年多くの鉄道会社で採用されていますが、京成ではそれに加えて、停止位置検知用センサの組み合わせによりAE形と一般車で車体長が異なることを活用した車種の判別も行わています(詳しくは後述)。

②在線検知用センサによる編成両数の検知

①の方法で列車の定位置停止を検知した際、ホームに複数箇所(日暮里駅0番線では4ヶ所)に設置された在線検知用センサがそれぞれの場所で車両を検知しているか否かで列車の編成両数を判別しています。

③車両ドア開閉検知センサ増設による閉扉連動化

以前は車掌の手動操作だったホームドアの閉扉ですが、2019年夏頃より各ホーム3ヶ所に車両ドア開閉検知用センサが増設されます。これにより、車掌がドア閉操作を行い車両ドアが閉まり始めると、センサがそれを検知してホームドアも追従して自動閉扉するようになりました。


以上のような方法で、規格が大きく異なる車両が混在する路線でも、車両側の改修を必要とせずに、車種・編成両数に対応した箇所のホームドアを自動で開閉する制御が行われています。


各種センサ配置図

下りホームでは停止位置検知用センサが計4基あり、便宜上それらにA・B・C・Dという名称を付けています。そしてそのうちのA・DはAE形の連結部に、B・Cは一般車の連結部に合わせて設置されています。

前述の通りAE形と一般車では車体長も異なるため、例えば一般車の連結部をセンサAとセンサDで同時に検知することは物理的に有り得ないことから、

  • センサA・センサDで連結部を検知=AE形と判定
  • センサB・センサCで連結部を検知=一般車と判定

上記のように車種の判別が可能となっています。


一方、AE形と一般車が同じホームに発着する0番線では、編成の中央にあたる4-5号車連結部を合わせるように両車の停止位置が設定されており(両車のドア位置のズレ量を最も少なくできる位置のため)、その4-5号車連結部にセンサBが設置されています。一方の、両車で3mほど連結部の位置にズレが生じる1-2号車連結部には、AE形の連結部にセンサAが、一般車の連結部にセンサCがそれぞれ設置されています。

このように、両車で場所が同じ連結部にセンサBを、両車で場所が異なる連結部にそれぞれセンサA・センサCを設けることで、

  • センサA・センサBで連結部を検知=AE形と判定
  • センサC・センサBで連結部を検知=一般車と判定

このように上りホームよりセンサを1基削減しながらも判別が行えます。



以上のように、京成日暮里駅はその駅構造が理由で、上下ホームでホームドアの仕様が大きく異なるという特徴があります。しかし、AE形と一般車の両方に対応可能な大開口ホームドアは、同駅0番線で稼働開始した翌年には空港第2ビル駅へも設置されましたが、こちらも駅構造が特殊であったため更に多くの特徴が生まれました。



参考資料

日暮里駅にホームドアを設置します - 京成電鉄

日暮里駅上りホーム(1階ホーム)にホームドアを設置します - 京成電鉄

日暮里駅上りホームにおいてホームドアの使用を開始しました - 京成電鉄

ホームドア | 三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社

諸岡 利憲「京成電鉄のホームドアについて」『鉄道と電気技術』Vol.30-No.7、日本鉄道電気技術協会、p19-2

「形式図/京成電鉄AE形」『鉄道ファン』Vol.49-No.580(2009年8月号)、交友社

「形式図/京成電鉄3050形」『鉄道ファン』Vol.50-No.590(2010年6月号)、交友社


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