京成電鉄 空港第2ビル駅のホームドア

取材日 2019年3月21日・11月30日

※今年4月に投稿した記事を再取材の上で加筆・修正した改訂版です。


1 ホームドアの概要

京成電鉄空港第2ビル駅では、2019年1月から3月にかけて京成本線・成田スカイアクセス線の全4ホームにホームドアが設置され運用を開始しています。大きな荷物を持った空港利用客で混雑する同駅ですが、2009年に新設された上りホームは一部が非常に狭く危険だったため、ホームドア設置で安全性が大幅に向上しました。

主要諸元は以下の通りです。

※正確な数値が判明していない寸法は目測での推定値を記載

同駅ではスカイライナー・モーニングライナー・イブニングライナーと一般列車が同じホームで発着しています。しかし、ライナーに使用されるAE形は1両あたりの車体長が19mなのに対し、一般車両は車体長18mと差がありドア位置も大きく異なるため、一般的なホームドアで対応することができません。そのため昇降式など新タイプのホームドアの導入も検討されたそうですが、最終的には三菱重工交通機器エンジニアリング製の二重引き戸式大開口ホームドアを最大限活用し、最大で幅5m超という巨大開口で両車への対応を可能としました。これは2019年末現在、昇降式等を除けば在来線のホームドアで最大のサイズです。

その他の開口部もAE形と一般車のドア位置のズレに合わせ、二重引き戸を組み合わせて様々な開口幅が作り出されています。

なお、同型のホームドアは同駅に先駆けて前年12月に日暮里駅0番線で稼働を開始しています。

この図は日暮里駅0番線のものですが、ホームドアの筐体構造自体は基本的に同駅のものと同じため、AE形と一般車のドア位置とホームドアがどのような位置関係にあるのかがお分かりいただけるかと思います。


また、同駅は成田スカイアクセス線と京成本線でホームが分かれているため、ホームドアの扉部もそれぞれの路線のイメージカラーであるオレンジとブルーに分けることで、ホームドア自体が視覚的なサインとしての役目を担っています。


乗務員操作盤(左)と運転士・車掌が停止位置を確認するマーカー(中央)。自社および乗り入れ各社の車両にはTASC(定位置停止装置)が整備されていないため、停止位置許容範囲は±650mmが確保されています。ただし、AE形と一般車でホームが分かれている日暮里駅下りホームのホームドア±750mmよりは僅かに狭まりました。

右には居残り検知用の3Dセンサがありますが、乗務員の出入りを考慮して筐体がホーム内側にセットバックされている箇所ではセンサが2つ設けられています。


2 本線経由列車のはみ出し停車

成田スカイアクセス線)開業に向けて2009年に新設された空港第2ビル駅上りホームは有効長が短く、3番線(京成本線上りホーム)は6両分しか確保できなかったため、京成本線上りの8両編成は後部2両が1番線(アクセス線上りホーム)にはみ出して停車します。

このような形態での運用が開始されてから10年近くが経過しますが、現在でも一般列車は車両・ホームドアともにドアカット等の抜本的対策はされず、放送やドア上部の表示器で誤乗防止を促すに留まっています。そのため訪日観光客などの不慣れな乗客が混乱する光景は現在でも頻繁に見られています。


個人的には、ホームドアが稼働開始すればホームドアをドアカットすることでこの問題は解消されるものと思っていましたが、結局はホームドアもそのまま開いてしまう形での運用となりました。車両ドアが開いていてホームドアが閉まっているという状態はやはり危険ということなのでしょうか。

こうした中、2019年にデビューした新型車両3100形に同社の車両で初めてドアカット機能が搭載されたことで、ついに本格的な対策へ動き出す予兆が現れました。しかし現時点で他形式にドアカット機能の増設されたという情報はありません。東京オリンピックが迫る中、果たして実現するのはいつ頃になるのでしょうか・・・


一方、AE形で運行される本線経由のモーニングライナーでは当初よりドアカットが行われているため、はみ出す部分のホームドアも開くこともありません。

モーニングライナー・イブニングライナーは他の停車駅でも乗車口を限定して検札を行う目的のドアカットが行われています。


また、この本線経由列車がはみ出す部分のホームドアは、3番線に停車する本線経由AE形のドア位置にも対応した構造とされており、緊急時などには開扉して乗降することができるようです。


3 ホームドアの開閉方式

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉(上昇):自動(車種判別・定位置停止検知・両数検知)
  • 閉扉(下降):自動(ドア開閉検知)

京成電鉄のホームドアは、直通先の都営浅草線・京急線で採用されたQRコード式ではなく、センサ等の地上側設備のみで車種・編成両数の判別や車両ドアの開閉を検知する「地上完結型連携システム」によって制御されています。詳しくは別記事で紹介していますのでご参照下さい。

このシステムを構成する3種類のセンサには停止位置検知用センサ・在線検知用センサ・車両ドア開閉検知用センサという名称が付けられています。これらの各種センサそれぞれの役割は以下の通りです。


①停止位置検知用センサによる車種判別・定位置停止の検知

測域センサ(2D-LiDAR)で車両の連結部を測定することで列車が停止位置許容範囲内に停止したことを検知します。この方式は近年多くの鉄道会社で採用されていますが、京成ではそれに加えて、停止位置検知用センサの組み合わせによりAE形と一般車で車体長が異なることを活用した車種の判別も行わています(詳しくは後述)。

②在線検知用センサによる編成両数の検知

①の方法で列車の定位置停止を検知した際、ホームに複数箇所(日暮里駅0番線では4ヶ所)に設置された在線検知用センサがそれぞれの場所で車両を検知しているか否かで列車の編成両数を判別しています。

③車両ドア開閉検知センサ増設による閉扉連動化

以前は車掌の手動操作だったホームドアの閉扉ですが、2019年夏頃より各ホーム3ヶ所に車両ドア開閉検知用センサが増設されます。これにより、車掌がドア閉操作を行い車両ドアが閉まり始めると、センサがそれを検知してホームドアも追従して自動閉扉するようになりました。


以上のような方法で、規格が大きく異なる車両が混在する路線でも、車両側の改修を必要とせずに、車種・編成両数に対応した箇所のホームドアを自動で開閉する制御が行われています。


各種センサ配置図

ここでは2番線アクセス線下りホームを例に、AE形と一般車を判別する方法を解説します。

AE形と一般車が共に発着するホームでは、編成の中央にあたる4-5号車連結部を合わせるように両車の停止位置が設定されており(両車のドア位置のズレ量を最も少なくできる位置のため)、2番線の場合はその4-5号車連結部にセンサBが設置されています。一方の1-2号車連結部にはAE形の連結部にセンサAが、8-7号車連結部には一般車の連結部にセンサCがそれぞれ設置されています。

前述の通りAE形と一般車では車体長も異なるため、例えば一般車の連結部をセンサAとセンサBで同時に検知することは物理的に有り得ないことから、

  • センサA・センサBで連結部を検知=AE形と判定
  • センサC・センサBで連結部を検知=一般車と判定

上記のように車種の判別が可能となっています。



2019年度中には成田空港駅の各ホームにもホームドアが設置される予定です。成田空港駅のアクセス線ホームは1番線がアクセス特急用、4・5番線がスカイライナー用と案内上では明確に分けられていますが、近年ではこの案内にそぐわない例外的列車が増えているので、結局は全ホームが2ビル駅と同じAE形と一般車両方に対応したホームドアとなりそうです。



参考資料

空港第2ビル駅のホームドア及び多機能トイレを 2019年2月から順次使用開始します - 京成電鉄

ホームドア | 三菱重工交通機器エンジニアリング株式会社

諸岡 利憲「京成電鉄のホームドアについて」『鉄道と電気技術』Vol.30-No.7、日本鉄道電気技術協会、p19-23

「形式図/京成電鉄AE形」『鉄道ファン』Vol.49-No.580(2009年8月号)、交友社

「形式図/京成電鉄3050形」『鉄道ファン』Vol.50-No.590(2010年6月号)、交友社


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