JR明石駅3・4番のりばの昇降式ホーム柵

取材日 2020年2月1日・3月31日

※4番のりば稼働開始後の再取材を反映し全面的に改訂しました(2020/04/04)。


本日2020年2月1日、JR神戸線(山陽本線)明石駅3番のりばで昇降式ホーム柵の稼働が開始されました。

明石駅は兵庫県内のJR駅で3番目の乗車人員(2018年度の統計)を誇る主要駅で、国・兵庫県・明石市による費用補助のもと2018年度より新快速・特急が発着する3・4番のりばへ昇降式ホーム柵を設置する工事が開始され、この度工事が完了した3番のりば(下り姫路方面)が先に稼働を開始しました。JR西日本管内で昇降式ホーム柵が稼働中の駅はこれで5駅目となります。

また、同駅は通勤特急「らくラクはりま」および山陰方面の気動車特急「スーパーはくと」「はまかぜ」の停車駅であり、気動車列車が定期発着するホームにホームドアが設置されるのは全国で初めてとなります。


1 ホームドアの概要

基本的な構造・方式などは大阪駅・三ノ宮駅に設置済みの筐体と大きく変わっていない模様でした。

主要諸元は以下の通りです。なお、寸法などは「新型ホームドア導入検討の手引き - 国土交通省」(リンクは参考資料の項に記載)に記載された高槻駅の筐体の諸元から引用しているため、変更点が存在する可能性があることをご了承下さい。


1.1 筐体・ロープ

筐体には4つのタイプがあり、左右2つに支柱がありそれぞれを個別に上下できるAタイプ、Aタイプの支柱をどちらか1本だけにした形でホーム両端に設置されるB・Dタイプ(A・B・Dタイプはメインポストと呼ばれる)、メインポスト同士の間でロープを保持するCタイプサブポスト)の組み合わせで構成されています。

ロープの素材に使用されているのは軽量でたわみに強いカーボンストランドロッド(小松マテーレの「カボコーマ・ストランドロッド®」)だと思われます。


※写真は大阪駅5番のりばの筐体

昇降中のロープや支柱への巻き込み防止にのため光電センサや圧力センサが多数設けられています。ロープと車両との間の居残りを検知するセンサには3D距離画像センサが使用されています。


1.2 車両ドアとの位置関係

2019年3月改正現在で明石駅3・4番のりばに発着する車種・編成両数は以下の通りです。

  • 一般型車両(20m3ドア)最大12両編成
  • 289系6両編成(通勤特急らくラクはりま)
  • 智頭急行HOT7000系5両または6両編成(特急スーパーはくと)
  • キハ189系3両または6両編成(特急はまかぜ)

これら規格の大きく異なる様々な車種が発着するため、最大約13mの広い開口幅によって全てのパターンのドア位置に対応させています。


3番のりば(姫路方面)

例外部分もありますが基本的な筐体の配置は、メインポストが20m車の連結部分にあり、その間のいずれかの場所でサブポストが補助するという単純な構成となっています。列車の停止位置は駅の階段位置などを考慮して全体的に姫路方に寄せられている中、どのような事情なのかスーパーはくとの停止位置は他車種よりずいぶんと大阪方に寄っています。


289系の姫路方先頭車は流線型で停止位置目標が分かりにくいためか、着色したポールとロープによって許容範囲を表す運転士用停止位置マーカーが設けられていました。なんというか画期的かつ経済的な方法ですね・・・


4番のりば(大阪方面)

3月12日に稼働開始された4番のりばは、特急車の停止位置や4-8号車にかけての筐体配置が3番のりばと大きく異なっています。この違いによって、289系およびキハ189系が発着した場合に乗降ドアの位置と筐体配置の関係で列車後部のホーム柵を余分に開けざるを得ない箇所が発生しています。


正確には3番のりばの289系発着時でも同じ理由で前部が約5m余分に開きますが、4番のりばではサブポストを挟んだ約10mが開いてしまいます。

このような "余分に開く" 光景は高槻駅・大阪駅でも一部車種の発着時に見られ、ホームからの転落防止というホーム柵本来の役割が果たせていないというのは重大な問題点だと感じるのですが、JR東日本成田空港駅・空港第2ビル駅に設置された昇降式ホーム柵でも同じく余分に開くパターンが発生するようです。

車種ごとのドア位置を考慮しながらメインポストを増やし制御単位を区切ればこの現象を減らせるはずですが、おそらくそうもいかない様々な事情があるのでしょう・・・


289系の大阪方先頭車は高運転台のため、4番のりばの停止位置マーカーはホーム上部から吊り下げられていました。こちらはちゃんとした(?)ボードです。


一方、キハ189系・HOT7000系の停止位置には許容範囲の中心位置だけが記された簡易的なマーカーが設置されていました。


2 ホームドアの開閉方式

同駅のホームドア開閉方式は以下の通りです。

  • 開扉(上昇):自動(車種判別・定位置停止検知・編成検知)
  • 閉扉(下降):車掌手動操作

同駅をはじめJR西日本在来線各駅のホームドア・昇降式ホーム柵は、地上側のセンサ等で列車の定位置停止・編成両数を検知し自動で開扉するシステムが使用されています。詳しくは別記事でまとめて紹介していますのでご参照下さい。


2.1 在線検知センサ

各編成両数の停止位置前方に設置されているBOX内の測域センサ(LiDAR)が車両前面を測定し列車の定位置停止を検知しています。使用されているのは他駅と同じく北陽電機のUXM-30シリーズです。


在線検知センサの配置は図の通りです。

しかし、在線検知センサだけでは編成両数の判別ができません。ですが、大阪駅・三ノ宮駅と同じく編成検知センサやそれに代わる機器らしきものは設置されていませんでした。代替としてどのような方法で編成検知を行っているのかは今のところ明らかになっていません。

この件については『R&M : Rolling stock & machinery』2020年2月号の「ホーム柵仕様最適化によるコスト削減」に詳しい記述がありました。

2019年2月に稼働開始した大阪駅5・8番のりばの昇降式ホーム柵からは、ホーム柵と車両の間の旅客居残りを検知する3Dセンサに車両検知エリアを追加し編成検知を兼任する方式に改めて、従来の編成検知センサを廃止することでコストを削減した、とのことです。


2.2 車掌用開閉操作盤・リモコンによる閉操作

特急車の最後部に設置されているリモコン受信機。

JR西日本のホームドア・昇降式ホーム柵は、開扉は自動ですが閉扉は車掌の手動操作で行われます。同駅の車掌用開閉操作盤は2018年度以降に設置されたホームドア・昇降式ホーム柵での標準となっている押しボタン式です。

しかし、特急車では最後部の乗務員扉から筐体までが大きく離れている場合があり、筐体に設置された車掌用開閉操作盤と車両ドアを同時に操作することができません。そのため車掌が携帯するリモコンで閉操作が行われています(筐体までの距離が近い3番のりばのキハ189系3両編成を除く)。リモコンで閉操作を行うのは大阪駅8番のりばの特急こうのとり発着時に続き2例目です。


受信機の位置が高いためかリモコン操作がうまく受信されないことが多く、初日はメーカーの方が車掌に操作のコツをレクチャーしていました・・・

このときホーム柵は車掌がリモコン操作や安全確認をしやすいようになのか、本来なら開ける必要のないエリアも開いてしまいます(当記事1枚目の画像も参照)。乗降ドアの位置と筐体配置の関係で余分に開けざるを得ない箇所があることは前述しましたが、こちらは直近に乗降ドアが無い場合でもです。


稼働開始2ヶ月後の3番のりば。より低い位置に受信機の子機を増設することで対策が行われていました。


2.3 車種判別システム

3番のりばの手前に設置されたIDタグ読み取り装置。

同駅では特急車と一般車を同じ在線検知センサで検知する箇所があるため、高槻駅・大阪駅と同じく、ホームに入線してきた車両に取付けられたIDタグから車種情報を読み取り、車種ごとの前面形状・停止位置に応じた在線検知センサの検出アルゴリズムを設定するシステムが導入されています。


289系・HOT7000系・キハ189系それぞれの先頭車両にはIDタグが取り付けられました。



日本にホームドアというものが登場してから半世紀近くが経過しますが、今回ようやく気動車×ホームドアという組み合わせが実現しました。JR西日本は今後も引き続き、利用客が多くかつ規格の異なる車種が発着するホームには昇降式ホーム柵を整備していく方針で、これからも新たに様々な車両との組み合わせが生まれていくことでしょう。



参考資料

駅のホームの安全性向上にむけて 明石駅3・4番のりば「昇降式ホーム柵」の設置:JR西日本

明石駅3番のりば 昇降式ホーム柵を使用開始:JR西日本

新型ホームドア導入検討の手引き - 国土交通省

大西 悟史、内山 浩光、平田 悦隆、高城 進司「高槻駅昇降式ホーム柵の特徴と機能改善」『Cybernetics : quarterly report』Vol.22-No.4、日本鉄道技術協会、2017年、p25-29

平野 雅紀、河合 陽平、荻野 宏城「ホーム柵仕様最適化によるコスト削減」『R&M : Rolling stock & machinery』2020.2、日本鉄道車両機械技術協会、p43-46

松原 達也「日本信号におけるホーム安全ソリューションへの取組み」『鉄道車両と技術』Vol.23-No.4、レールアンドテック出版、2017年、p17-22


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